家族支援のきほん

児童虐待の基礎知識その1 児童虐待とは?

支援を志す人のために、児童虐待についてざっくりわかるよう、私なりに簡単にまとめました。
3回シリーズのその1です。

児童虐待とは?

一般には、児童虐待という言葉が広く使われていますが、厚生労働省などでは「子ども虐待」という言葉が使われています。
虐待という字が、すごくひどい乱暴をするイメージを連想させますが、実際には、児童虐待は「子どもに対する不適切な行為のすべて」を指します。
ですから、英訳は、「child abuse(チャイルドアビューズ)」ではなく「child maltreatment(チャイルドマルトリートメント)」のほうがニュアンスが合っています(abuse は すっごいひどいことをするというイメージ、maltreatmentは、ひどい扱い方をするというイメージ)。
児童虐待には、つい一度だけ手を挙げてしまったというような軽微なものから、精神的に痛めつけられ殺人に至る重篤なものまで、様々なケースがあります。

児童虐待はおもに4種類

身体的

児童の身体に外傷が生じ、又は生じる恐れのある暴行を加えること。
●外傷とは打撲傷、あざ(内出血)、骨折、頭蓋内出血などの頭部外傷、内臓損傷、刺傷、たばこなどによる火傷など。
●生命に危険のある暴行とは首を絞める、殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶる、熱湯をかける、布団蒸しにする、溺れさせる、逆さ吊りにする、異物をのませる、食事を与えない、冬戸外にしめだす、縄などにより一室に拘束するなど。
●意図的に子どもを病気にさせる。
など

性的

児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
●子どもへの性交、性的暴行、性的行為の強要・教唆など。
●性器を触る又は触らせるなどの性的暴力、性的行為の強要・教唆など。
●性器や性交を見せる。
●ポルノグラフィーの被写体などに子どもを強要する。
など

ネグレクト

児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前2号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
●子どもの健康・安全への配慮を怠っているなど。例えば、(1)家に閉じこめる(子どもの意思に反して学校等に登校させない)、(2)重大な病気になっても病院に連れて行かない、(3)乳幼児を家に残したまま度々外出する、(4)乳幼児を車の中に放置するなど。
●子どもにとって必要な情緒的欲求に応えていない(愛情遮断など)。
●食事、衣服、住居などが極端に不適切で、健康状態を損なうほどの無関心・怠慢など。
例えば、(1)適切な食事を与えない、(2)下着など長期間ひどく不潔なままにする、(3)極端に不潔な環境の中で生活をさせるなど。
●親がパチンコに熱中している間、乳幼児を自動車の中に放置し、熱中症で子どもが死亡したり、誘拐されたり、乳幼児だけを家に残して火災で子どもが焼死したりする事件も、ネグレクトという虐待の結果であることに留意すべきである。
●子どもを遺棄する。
●祖父母、きょうだい、保護者の恋人などの同居人がア、イ又はエに掲げる行為と同様の行為を行っているにもかかわらず、それを放置する。
など

心理的

児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
●ことばによる脅かし、脅迫など。
●子どもを無視したり、拒否的な態度を示すことなど。
●子どもの心を傷つけることを繰り返し言う。
●子どもの自尊心を傷つけるような言動など。
●他のきょうだいとは著しく差別的な扱いをする。
●子どもの面前で配偶者やその他の家族などに対し暴力をふるう。
など
(厚生労働省ウエブサイトより抜粋)

こんな虐待もある

厚生労働省の4類型を読むと、「それはそうでしょ。それはダメでしょ」という印象を持つ方も多いと思いますが、これ以外にも、一見子どものために見える行為が実は児童虐待であるというケースもあります。

やさしい暴力

アダルトチルドレンの概念を紹介した著名な精神科医・斎藤学さんが提唱したものです。
「あなたのためよ」という言葉とともに、子どもの人生に侵入し続ける親をイメージしています。
子どもに良かれと思ってする親のあれやこれやが、どんどん子どもを追い詰めていく。
一見すると、しっかり子育てしている家庭にしか見えません。
けれど、それが子どもにとって過度の負担なら、それは虐待です。
優しい暴力は、周囲も、親自身も、虐待だ気づきにくいので厄介です。

教育虐待

新しいワード、教育虐待も上記と同様、十分すぎる教育を子どもに与えようとすることが、虐待につながるという考えです。
それを、早いうちから子どものほうががあからさまに拒否することができれば、まだ救いがあります。
親の期待に応えよう、と、けなげに長い間頑張る子どももいます。
そのような場合、期待通りの進学就職を経て、30代になってからその弊害が現れることもあります。
教育虐待のいちばん悲劇的なケースでは、親による子殺し、子による親殺しに至ることもあります。

代理人によるほら吹き男爵症候群

これはとても分かりにくい虐待です。
親や養育者が、子どもを病気に仕立て続ける状態をこう呼びます。
健康な子どもが、なんらかの疾患だとされて、不必要な治療を受けさせられ続ける虐待です。
子どもの方も、親に言われてそれを演じ続けたりします。
なぜそのようなことをするのか。
厚生労働省のサイトには、「心理的なメカニズムとしては子どもや医療システムを支配する満足を得ることと同時に、大変な子どもを育てている献身的な保護者像を作り上げながら、医療的なケアを受けることが目的であると考えられている。」とあります。
私は、ケアされたい、大切に扱われたいという欲求の強い親が、子どもをそのための手段にしているのではないかと考えています。

虐待が子どもにもたらすもの

とても切ないことですが、虐待を受けたことは、その後の人生に大きく影を落とします。

自己肯定感の破壊

*自己肯定感とは、自分の存在そのものを喜んでいる状態、と私は定義しています。

身体が健康に育つために水と食料が必要なように、子どもの精神が健全に育つためには、自己肯定感、自己効力感、自己有用感といった感覚が不可欠です。なかでも自己肯定感は、水に匹敵するくらいなくてはならないもの。
赤ちゃんは、充分な自己肯定感を持って生まれてくると私は考えています。
けれど、成長の過程で虐待を受け続けることで、これを破壊されてしまう。
自己肯定感を損なった人は、「生きづらさ」を抱えます。
ひどいときには、それは問題行動や精神疾患、果ては自殺にも繋がってしまいます。

本来的家族イメージの欠落

子どもは自分の家庭しか、家庭を知りません。
だから、もしその家庭で日常的にしんどい状況があったとしても、他の家も同じようなものなのだと考えます。
子どもは、毎日、自分の家庭の中で生きているので、それが家庭のスタンダードと信じていて、他の家庭と比較検討できないのです。
何かきっかけがあったり、よほどのことがあったりしなければ、自分の家庭がレアケースだとは気づきません。
そのまま成長してしまうと、育ってきたのと同じような家庭を築いてしまいます。
逆に、その不健全さに気づいて、自分の家庭とは違う家庭を築きたい、と思っても、無理をしすぎてうまくいかなかったりします。

不完全でも、いい加減でも、なんだかホッとできる。

そんないい塩梅の家庭を築くのは、円満に育った人には息を吸うようにできること。
けれど、本来的な家庭のありようのイメージがない人にとっては、とても難しいことなのです。

子ども虐待対応の手引き
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv12/00.html
児童虐待の防止投に関する法律
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv22/01.html
(厚生労働省ウエブサイト)

mami
mami
ウイキペディアの児童虐待の記述も、だいぶ詳しく網羅されていますよー

児童虐待の基礎知識 その2 では 児童虐待が起きる理由について、その3では 児童虐待の事後対応について、その4 では、児童虐待の未然予防について、その5 では児童虐待のない社会を作る について解説します。