家族支援のきほん

子ども家庭福祉ソーシャルワーカーになりたい皆さんへ 

(2022年記述)
私が、国内に家族支援職資格がないために、できない英語と覚えたてのパソコンで、必死でカナダの家族支援職資格課程で学んで早20年。とうとう、日本にも家族支援職的な資格が創設されるという。
子ども家庭福祉分野の資格・資質向上について(案)

mami
mami
英語の世界と日本の時代差は20年だと思ってるけど、これも、やっぱり20年かかったな。いや、あっちじゃ90年代には成立してたから、30年か。
a reader
a reader
20年前に英語の世界の家族支援を知って、日本でいろいろ言っても、こっちは機が熟してないからあんまり相手にしてもらえなかった恨みがあるからって、すぐそういうこと言うな、マミさんは。
mami
mami
でも、あんとき私の言うことを聞いてくれたらさー、未来(つまり今の)の状況をもっと改善できていたと思うよー。私は、慣れない英語を頑張って20年先の未来を見てきたんだからさー
a reader
a reader
家族支援だけじゃないよ。世の中っていうのは,何事も機が熟さないと聞く耳持たないもんなんだよ。早すぎる人は変わり者扱いされて奇異な目で見られるだけ。ちょうどいいときに言うのも才能よ。
mami
mami
あーその才能はないわー。私は言いたいときに言いたいことを言うことしかできないもん。これが私の人生じゃわ

私が家族支援者つまり家族のウエルビーイングを応援することを志した1989年頃には、家族支援なんて仕事はどこを見渡してもなくて(私の場合は予防的教育で、福祉とはちょっと違う…)。だから、そのための勉強は図書館通いの独学で、活動は一生ボランティアでやるものと思い込んでいた。

カナダ、アメリカには、そういう仕事があるらしいと知ったのはその10年後。日本に子育て支援という業界が成立し始めた頃。
ある大学の先生が、カナダの大学の通信教育を受ければその資格が取れるという報告を書いていて、私は喜んでそれに飛びついた。けれど、その大学の先生にも、周りの子育て支援者にも、「まさか、そんなことをするなんて」というニュアンスで受け止められ、ファミリーライフエデュケーターの資格を取った後も、ごく一部の人をのぞいて、誰も、私の学習内容を根掘り葉掘り聞いてはこなかった。

当時は、カナダの子育て支援は子育て支援業界のトレンドだったから、資格を取った私を講師に呼んで勉強してくださった支援者もいたけれど、私にしてみれば、「さあこちらです」と玄関を開けて見せただけで、みんな満足して帰っていってしまう、という感じだった。

当時は自分の子育てに忙しかったから、請われれば行くけれど、自分からあまり発信せずというスタンスを貫いていて、今考えると、あの頃にちゃんと学んだことを一冊の本にでもまとめておけばよかったと思う。気が付いたら、自分の中にそれらをため込んだまま時が過ぎ、もう引退するお年頃になっちゃった。

というわけで、今更このようなサイトを作ってじたばたしているんだけれども。

mami
mami
まあ、もう、それはいいや。それより、今言いたいことはさ、今までの経験上「有資格者だからいい支援ができる」という相関関係が成立していない気がするから、新しい資格は、その相関関係が成立する、信頼できる資格になってほしいってことなのよ!
a reader
a reader
おせっかいだな。もう自分がその資格を取るとか、そういうわけじゃないんでしょ?
mami
mami
私は予防教育の専門家で、これは福祉的家族支援の資格だからちょっと違うし、私はもう引退するお年頃だって言ってるじゃん!
a reader
a reader
じゃあ、口を出さなくてもいんじゃね?
mami
mami
そうなんだけど、今まで、有資格者に苦しめられる当事者の相談に何度ものってきたからさ……もうそういうことは起こってほしくないんだよ……

というわけで、勝手に援護射撃。
新しい資格が、ほんとうに信頼できる資格になるための情報を、頼まれもしないのに集めてみました。

Contents

センスと経験と学習と

私なりに分析すると、家族支援者には、3つの要素が必要です。
それは、センス経験学習
この三つがそろって初めて、効果的な支援ができます。

mami
mami
今はもう教育業界にどっぷり浸かっちゃっているから、私は、家族支援の最新知識や地域情報の学習が足りてないだろうなあ。センスと経験は自信あるんだけどなー
a reader
a reader
……えらそーに(笑)
センスについて

自分は、家族支援に必要なセンスがある、という確信がない人は、最初から資格を取るのはやめましょう。
支援する側もされる側も苦しくなってしまいますから。

そんなこといっても、センスって何なんだよ? と言われても、これが言葉で説明できない、なんとなく、のものでして、だからこそ、センスであるわけで。
私は自分が、家族支援のセンスがあると確信しているけど、それも、実は大いなる勘違いかもしれないし(でもカナダの先生からお墨付きもらったから大丈夫だと思うけど)、センスのない人が堂々とセンスがあるふうに立ち回っているのを見たこともあるし、センスががっつりある人が「私なんて」と遠慮しているパターンも知ってるし。
だからセンスって何なんだよ? っていうことなんですけど、非言語的な存在なので、説明が難しい。カンと言い換えることもできるのかな。あるいは察知力?
とにかくオールラウンドに、その当事者に必要なものが透けて見える感じがある感覚、かなあ?

って、これだけ訳の分からない説明を受けてもなお、

a reader
a reader
自分は大丈夫な気がする

って思える人なら、きっと大丈夫な気がする。

経験について

これは、なくちゃダメということはないけれど、経験を積んでいけば積んでいくほど、いい支援者になれると思います。
経験には、支援者としての経験だけではなくて、当事者としての経験も含まれます。

当事者の場合は、その経験を昇華している必要があります。精神科医やカウンセラー(臨床心理士、公認心理師等)の中には、自身の問題を抱えたまま、その職種についているケースも少なくないそうです。同じようなことが、新しい資格に起きないようにするためには、サバイバーという概念を知っておく必要があります。
この文脈でのサバイバーとは、ある一定の経験(被虐待など)をしながら、その経験からの心の傷を充分癒し、健全な精神状態を取り戻した状態を言います。
サバイバーが支援者になると、共感力が高く、また、支援される人のロールモデルにもなることができます。

学習について

資格取得のための机上の学問は、必ずしも必要ないかもしれませんが、実際的な学習はやはり必須です。
具体的には、その自治体の支援リソースや、支援される人が利用できる制度や申し込み手順等に明るくなければ、システマティックな支援はできません。
当事者が精神疾患を患っていることも少なくありませんから、そのへんの専門知識も、正確に把握している必要があります。
これらは、絶えず変わったり新しくなったりするので、資格取得後もコンスタントに勉強し続けなければなりません。
また、一見支援とは関係がないようなところにも支援のタネは転がっているので、いつでもいろいろなことにアンテナを張っておくと、どんどん新しい情報を手に入れることができると思います。

資格があろうとなかろうと、この3つの要素を備えていなければ、支援者にはならないほうがいいと思っています。
言い換えると、資格を持ったら、この3つの要素を必ず備えていてほしいのです。

カナダ・アメリカでは、資格より実力が優先されるし、資格より実践力/行動力、支援の有効性が重視される印象があります。
一方、日本では、なにより資格の有無が重視されます。ところが、資格が雇用の条件になるわりには、資格が実力を担保しないという悩ましい状況ががあります。

もちろん素晴らしい有資格者の方もたくさんおられると思いますが、当事者の方から、有資格者への不満を聞くこともとても多いです。
新しい資格には、この、哀しいパターンを、ぜひ壊してほしいと思っています。

我が母校の最新情報(カナダの家族支援資格)

参考までに、私が家族支援職資格を取った我が母校の現在の家族支援者の教育システムを調べてみました。

それ以前に、既に10年間の独学と実践でそれなりの力を蓄えていましたけど、この家族支援職資格課程の学びは、ほんとうに私の以後の血肉となったので、皆さんにもぜひお勧めしたいです。
と言っても英語で学ぶのはハードルが高いという方が多いので、新しい資格の講習に、日本語バージョンで盛り込まれたらいいなあ。

mami
mami
もしかしたら、こんな心配する必要なんかなくて、素晴らしい講習が既に用意されてるかもしれないけど。まあ念のため、紹介しますわ

なんと、20年たった今では、ライアソン大学はトロントメトロポリタン大学と名称を変え、家族支援職資格課程もなくなっていました。

その代わり、家族支援を包括する資格課程として、Community Engagement, Leadership, and Development(コミュニティエンゲージメント、リーダーシップ、開発)というものがありました。
実際、家族の問題はコミュニティとの関係を無視しては成立しないので、当然の帰結かもしれません。

この資格を得るには、4つの必修科目と2つの選択科目の計6科目を、ある一定以上の成績で修了しなければなりません。

1科目には13週間かかり、毎週かなりの量の学習課題があって、最後にも修了のための課題をします。
毎週、違うテーマが課されます。毎回その週のテーマに関する多様な文献を読みこなし、自分なりの意見を言うことが求められます。それぞれクラスメートとのオンラインディスカッション、掲示板、動画、演習等もあるらしいです。日本の大学で1年間学ぶ科目とはイメージが違うかも。

資格をもらうためにはすべての科目の成績を一定以上キープするという条件もあります。

ただし、日本のように基礎資格や経験は問いません。学習は誰にも開かれています。でも実際には、すでにコミュニティで仕事をしている人が、学習の必要性を感じて受けにくるというイメージです。

また、コースシリーズ(専攻みたいなものかな?)として、Family Supports and Community Engagement(家族支援とコミュニティエンゲージメント)というのがあって、Family Supports(ファミリーサポート)は文字通り家族支援、Community Engagement(コミュニティエンゲージメント)とは、そのコミュニティをよくするために、何らかの目的をもって積極的にコミュニティに関わっていく営み、と言えばいいのかなあ。だから、おそらく、このコースシリーズが、日本の子ども家庭福祉の新しい資格に相当するのかなあと思います。

このシリーズの場合、必修2科目と選択6科目のうち1科目の合計3科目を取得し、申込用紙を送ると、Professional Development Award (PDA)(資格というほどではないけれど、プロとして仕事できますというお墨付き的なものかな?)がもらえるそうです。

mami
mami
私のときは8科目も取らなくちゃいけなかったのに……
a reader
a reader
時代は変わっていくのだよ。

トロントメトロポリタン大学「家族支援とコミュニティエンゲージメント」シリーズの解説

ここには、おそらく日本の子ども家庭福祉資格に相当すると思われるProfessional Development Award (PDA)をとるために必要な科目の内容について、翻訳を載せておきます(2022年のものです)。元のサイトはもちろん英語なので、英語ができる人なら、英語で読んだほうがずっとニュアンスは伝わると思う。
カナダ・トロントメトロポリタン大学レイモンドチャンスクールFamily Supports and Community Engagement(家族支援とコミュニティエンゲージメント)コースサイト

Family Supports and Community Engagement(家族支援とコミュニティエンゲージメント)コース解説翻訳

このコースシリーズは、幼児期の教育、家族支援、コミュニティエンゲージメント、健康関連分野の分野で働く実践者のための知識を広げ、統合するスキルの高まり続ける需要に応えます。また、多様なコミュニティベースのプログラムで働きながら学ぶ学習者も支援します。

学生は、子供の健全な発達を促進しつつ、現代の家族が経験する課題に迫るための知識と力を獲得します。このコースシリーズでは、家族と地域社会のウエルビーイング状況を改善する効果的な計画、問題解決、意思決定プロセスに家族を関与させるための具体的な戦略にも焦点を当てています。

科目

各科目の最後に詳しいコーススケジュールへのリンクを載せておきます。興味のある方はこれをじっくり読んでみてください。、AI翻訳による日本語バージョンをリンクしておきますが、もちろん原本は英語です。

必修科目

Community Engagement Practices(コミュニティエンゲージメントの実践)
このコースでは、コミュニティの能力構築とコミュニティの幸福向上のためのベストプラクティスを学びます。コミュニティエンゲージメントプロセスを効果的にサポートするために求められる知識とスキルに焦点を当てます。ケーススタディと体験演習は、効果的なコミュニティエンゲージメントとリーダーシップ開発のためにコミュニティプラクティショナーが必要とするスキルセットを伝えるためにコースで使用されます。
授業は、各学生のコミュニティエンゲージメント活動とリンクしつつ、参加型で行われます。
コーススケジュール

Family Supports Theory and Practice(家族支援の理論と実践)
このコースでは,家族のリソースと支援プログラムの理論と実践方法を検討するための概念的な枠組みを提供します。さまざまな視点を使用して、コミュニティ、公共および非営利プログラム、政府の政策の文脈で家族や介護者のニーズを探ります。学生は、コミュニティの環境での実践に理論を適用する機会があります。社会的支援とエンパワーメントの理論は、家族支援の基本的な構成要素として検討されています。学生は、幼児教育理論と家族支援をコミュニティベースのプログラムに統合する方法を模索します。
コーススケジュール

選択科目

Conflict Resolution in Community Services(コミュニティサービスにおける紛争解決)
幅広い分野の専門家は、新しい施設の開発に対するコミュニティの反対、環境基準の開発、新たな社会的ニーズを満たすための限られたリソースの割り当て、またはさまざまな利害関係者の相反する要求と期待への対処など、紛争を伴う状況に遭遇する可能性があります。このコースは、学生が誰もが一緒に暮らすことができる合意を生み出す合意形成戦略を開発できるように設計されています。このコースでは、さまざまな分野から引き出されたケース資料と例を使用します。
このコースでは、学術文献と経験的学習から引き出された概念とコアスキルを織り交ぜて、専門的な学際的実践に備える紛争有能な知識、態度、行動を開発します。葛藤の感情的、認知的、行動的側面を探求することで、批判的思考、内省的な実践、文化的流暢さ、コミュニケーションスキルが向上し、紛争を効果的に関与して解決する自信が生まれます。
コーススケジュール

Engaging Diverse Communities(多様なコミュニティと関与する)
このコースでは、多様なコミュニティと協力し、近隣や組織の幸福を向上させるために、排除されたグループを関与させるための実践スキルを構築することに焦点を当てます。学生は、地域の人口統計、コミュニティのアウトリーチとエンゲージメントイニシアチブを成功裏に導くためのこれらの調査結果の意味、および多様なコミュニティやグループとのエンゲージメント計画の実施を開発およびサポートする方法を評価し、理解することを学びます。
このコースの中核は、カナダの文脈で多くの個人やコミュニティを疎外し、排除する構造とプロセスを把握するために、社会関係における権力の理論、実践を知り、生きた経験をすることです。学生は、より大きな構造的抑圧に基づいて排除と疎外を生み出す方法で、権力がどのように定義され、行使され、維持され、強化されるかを学びます。法律、政策、慣行は、制度的および文化的抑圧の主催者として探求されるでしょう。生きた経験と批判的反射性に焦点を当てることは、現状を維持するのに役立つ支配的な言説を解体する上で最も重要です。学生は、新自由主義のイデオロギーと政策アジェンダに直面して、コミュニティ関与戦略、連合構築、草の根動員技術について学びます。このコースの包括的な視点は、インターセクショナリティに焦点を当てた反抑圧的、脱植民地化、社会正義の戦略を支持します。
コーススケジュール

Contemporary Family Issues(現代の家族問題)
この学際的なコースでは、現代の家族やコミュニティ生活に影響を与える重要な問題や人生経験、そしてより広い社会政治的文脈との関係について深く研究します。トピックには、家族の相互作用における文化的変化、家族構成の傾向、貧困、精神的健康、中毒、暴力、虐待などの家族の回復力と能力に影響を与える問題が含まれます。家族とコミュニティ生活を理解するためのさまざまな理論的枠組みが探求されます。
現代の家族問題は、重要な家族生活の構成要素を調査および分析するために、批判的な理論レンズを使用します。批判的理論は提供する社会的探求のための記述的および規範的基盤は、あらゆる形態の支配を減らし、自由を増大させることを目的としています。
このコースでは、内省的/反射的(現在および現在)の実践のテクニックを使用して、家族生活に関連する能力/障害、包含/排除、人種、民族性、性別、新参者の地位など、家族が直面するさまざまな課題を検討します。内省的/反射的実践は、経験、知識、スキルに関する情報を活用して学生を魅了し、情報を分析し、将来の同様の状況に対する新しいアプローチを構築します。
このコースでは、学生が自分の社会的および家族的アイデンティティを理解し、多様な家族を理解する際に反射的/反射的実践技術を利用することに挑戦し、それによって家族支援の分野で働くスタッフおよびボランティアとしての能力を構築します。読書、その他の関連ソース、タスク、および現代の家族問題に対する学生の理解を深める内省的な質問を使用して、重要なテーマに取り組んでいます。
このコースでは、家族支援の原則と実践に関する知識が必要です。家族支援の指針は、カナダ家族資源プログラム協会によって提供されています。
コーススケジュール

Guiding Children’s Development(子どもの発達をガイドする)
このコースでは、身体的、認知的、言語的、社会的、感情的など、すべての発達領域に焦点を当てて、子供の発達の主要な理論を検証し、社会文化的文脈の重要性の考察を含みます。このような開発は、コミュニティベースのプログラムにおける多様な環境に関連して考慮されます。特に、関係を構築し、行動を導き、出生から12歳までの子供の発達的ニーズを満たす上での両親、支援者、およびスタッフの役割が議論されます。
コーススケジュール

これらの科目は、内容が実際的であるだけでなく、学習する際にも、何か月もかけて、自分の価値感やコミュニケーション力や知識認識などを総動員して取り組まなければならないカリキュラムになっています。
なんていうのかなあ、自分が耕される感じの学習なのです。そう、学習自体がほんとうに面白いのですよ。

いかがでしたか? 私は、日本には日本のやり方があると思っていて、必ずしも、外国を猿真似する必要はないと思うけど、一方で、良いところはどんどん取り入れるべきだと思っています。日本の子ども家庭福祉ソーシャルワーカー認定のための学習も、このような外国の大学の家族支援関係の授業科目をおおいに参考にして、ほんとうに実力のある支援者を養成する一助になってほしいと思い、誰かの目に留まることを願って、調べて翻訳して、ここに残しておきます。