家族支援のきほん

児童虐待の基礎知識 その2 児童虐待が起きる理由

    ここでは、私がいろいろな見聞からまとめた、児童虐待が起きる主な理由を挙げます。実際には、もっと複雑で、それぞれの家庭にそれぞれの事情があると思います。また、総論で語るには重い問題であったり、個によって事情が異なる問題であったりもするので、サラッとしか述べていません。お察しください。
    というわけで、私が挙げていない理由も扱っていない問題もたくさんあるので、これは、大まかな知識として読んでください。

    時間と余裕のなさ

    子育てしたことのある人なら経験があるでしょう。時間がなかったり、精神的にイライラしていて余裕がなかったりした時に、子どもが駄々をこねたり泣きやまなかったりしたら、思わず手を挙げてしまいそうになる。

    また、自分の自由な時間を奪われる、とか、子育てのせいで好きなことを我慢しなければならないとか、そういうことにしんどさを抱えているケースでは、ネグレクトにつながります。

    親の生真面目さ

    生真面目だからこそ虐待につながるという場合もあります。

    キラクに子育てしている人なら、乳幼児の頃に、たまにはベビーフードやコンビニフードですませても特に罪悪感は持ちません。
    けれど、きちんと子育てしようと思えば思うほど、しっかり離乳食を作るなど、子どもを抱えながら完璧に家事をすることになるので、とうぜんしんどくなってくる。

    もう少し大きくなってからは、学習の問題が入ってきます。これについてもきちんと勉強させて、学習成績を維持しなければと思えば思うほど、厳しい言葉を過剰に子どもに浴びせたり、知らず知らずのうちに教育虐待に陥ってしまったりしてしまいます。

    夫婦関係

    子育てに悩み、虐待するかもという恐れを抱いている母親や、我慢できずに手をあげてしまったと嘆く母親に、詳しく話を聞いていくと、たいてい父親の問題に行き着きます。

    子育てに非協力的だったり、妻への労りがなかったりする夫と、不満を持ちながら暮らしている場合がほとんどです。
    逆の場合もあるかもしれません。

    夫婦間DVはもちろん、表面的にはケンカしないながら冷え切った関係で同居を続ける両親も、子どもにダメージを与えます。 

    貧困(金銭的なものだけでなく)

    貧乏であることが虐待に直結するのではなく、それが親のストレスとなっていると、虐待に繋がります。
    シングル家庭のように、経済的にも生活的にも大人は自分だけであるというのは、大変なことです。
    それだけでなく、いろいろな事情がある家族には、充分な支援が必要です。

    金銭的貧困以上にリスクがあるのは、関係性の貧困です。

    子育てがしんどい状況にあるのに、
    「助けて」を伝える相手がいない。あるいは身近な人に「助けて」と言えない。
    「助けて」と言ったけれど助けてもらえなかった過去がある。だから、もう言いたくない。

    そうなると、リスクは密室化していってしまいます。

    パワーの問題

    本来、親子あるいは世話するーされるの関係であっても、お互いの人権は尊重し合うのが当然です。
    しかし、この感覚がない場合、子どもは親の所有物であるように感じたり、関係性に上下・主従があるように思いこんでしまいます。
    このような感覚は、虐待の温床になるでしょう。

    虐待者のストレスの問題

    親が、自分の人生に不満やストレスを抱えていると、子どもがそのはけ口になってしまうことがあります。
    とくに、心理的虐待や性的虐待は、これによるものが多いと思われます。

    虐待者の特性の問題

    見落とされがちですが、虐待者の生来の特性の問題もあります。
    暴力性が脳の機能的損傷に由来し、本人の制御が効かない面があるのではないかという疑いがあります。
    また発達障害、軽度知的障害等が気づかれないまま親になり、その障害ゆえ子育てが上手くできないということもあります。
    本人も周囲も脳の問題や障害に気づいていないため、支援を得られないまま、子育てに1人で対応し、結果としては虐待に陥ってしまう。
    ニュースになって、それを見た人が「そんなことするなんて信じられない」と評するケースは、これかもしれません。

    虐待の連鎖

    もちろん、虐待は許されることではありませんが、虐待の連鎖について考えると、とても切なくなります。

    虐待をする親は、その人自身の子ども時代にしんどい状況を過ごしてきたというのはよくある話で、とくに重篤なケースでは、ほぼ100%の割合でそれが明らかになっています。

    子ども時代の虐待の影響を抱えたまま親になり、そして悲しい事件につながった、というケースばかり。
    じゃあ、その親が悪いのかといえば、虐待する親の親も、同様の経験の中で育っていたことがわかってくる。
    そしてその親も……と考えていくと、家庭が家庭として機能していなかった状況が、何代も続いていた可能性があります。

    これが、悲しい虐待の連鎖です。

    この連鎖は家族支援によって断ち切られなければなりません。

    社会通念という見えない鎖

    「子どもは親が責任をもって育てるもの。」
    この社会通念が覆れば、児童虐待のうち、身体的・心理的虐待は大きく減ると私は考えています。

    親は、この社会通念を自分たちのなかに取り込むからこそ、一人あるいは二人で頑張ろうとしてしまう。
    そしてうまくいかないと、
    「この子がちゃんとしないから」
    と、可愛いはずの子どもが憎らしくなってしまう。
    あるいは、世間の目を気にするあまりに、
    「ちゃんとしつけをしないと」
    と必死になって厳しくしてしまう。

    『私(たち)は子どもをちゃんと育てています。』
    親にとって、子どもが、世間にそうアピールするための道具になってしまうと、虐待につながります。

    本来、子どもは育てるものではなく育つもの。
    大人はそれを支えるだけでいいのです。

    そして育っている間は、多少不格好でも
    いえ、育ちあがってからも、それほど完璧じゃなくたっていい。

    そんな共通認識があって、
    しかも、

    もし、子育てしていない人たちが、
    「肩ひじ張らなくていいよ。子どもはみんなで面倒見よう。」
    と言って支えてくれるなら、親は追い込まれません。

    最初に述べたように、虐待の原因をすべて網羅することはできませんが、これまでの勉強や仕事を通じて、私は、以上のことが児童虐待が起きる主な理由としてあげられると思っています。

    子ども虐待対応の手引き
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv12/00.html
    児童虐待の防止等に関する法律
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv22/01.html
    (厚生労働省ウエブサイト)

    mami
    mami
    ウイキペディアの児童虐待の記述も、だいぶ詳しく網羅されていますよー

    児童虐待の基礎知識 その1 では 児童虐待の種類について解説しています。その3では 児童虐待の事後対応について、その4 では、児童虐待の未然予防について、その5 では 児童虐待のない社会を作る について解説します。