家族支援のきほん

家族と関わるときの5つのレベル~あなたはどのレベルで仕事をしますか~

ドハーティという人が整理した、家族とかかわるときの5つのレベルについてお伝えします。

家族支援の試みを、その対象者と効果や目的によって、1から5の段階に分けたものです。

こういうレベル分けの知識と、自分の働くレベルの自覚は絶対必要です。
 自分の仕事のレベルもわからず始めると危ないです。せいぜい3までしか実力がないのに、不用意に4や5に行ってしまうかもしれないし、1や2と、3や4を混同することもおきやすい。

 それを避けるために、この5段階を頭に入れておくといいと思います。

 さて、あなたは、どの段階で仕事をしますか? していますか?
 

Contents

教育と治療(家族関与レベルのモデル)

 
1995年の最初の論文で、ウィリアム・ドハーティは、どのように教育と治療を区別するか、という問題に取り組みました。
親と家族の教育の分野においては、学習と感情は分けられない、と彼は考えました。
そこで、ふたつの概念をひとつの連続体におき、それを5つのレベルに分けました。

レベル1-家族への最小限の注目

この段階では、同じ情報が全ての親に提示されます。

この関与のレベルは、病院、学校、その他の機関でみられます。しかし、個々の家族に焦点をあてる必要はありません。

レベル2―情報とアドバイス 

ドハーティは、スピーカーのプレゼンテーションや一回限りのワークショップをレベル2に分類しています。スピーカーは情報提供し、だいたいいつも聴衆のニーズをくみ取り、質問、意見、議論を歓迎しつつ、双方向のやり方で進めます。

このかたちは一度にたくさんの人に届くのに有効です。スピーカーに強いメッセージがあって、聴く側としては深いところの感情を議論しない、危険の低い環境です。

このようなイベントは、親が自分の子育てスタイルを探求するきっかけになるかもしれません。

しかし、親が自分だけで有意義な変化を得られることはめったにありません。

レベル3-感情とサポート

レベル3では、ファシリテーターは、情報を提供して、知識とスキルに関するアクティビティも実践します。
加えて、ファシリテーターは、話題になっているトピックに関する、個人的な感情や経験談を共有することを参加者に薦めます。

このレベルの仕事は、典型的に、相互サポートや信頼を築いていく親教育講座で見られるものです。
参加者は、日々の家族生活でのストレスについては話しますが、ファシリテーターは、トラウマ的な個人経験は探求しません。

たとえば、グループのメンバーが、過去の虐待を明らかにした場合、ファシリテーターは、このような自己開示は注意深く行われるべきと知っているので、適切な対応をしつつも、その虐待経験の癒しを、グループの主題にすることはありません。

ドハーティは、レベル3を、「ほとんどの、現在行われている親または家族教育のアクティビティにとって強さの最適レベル」と言っています。
けれども、彼は、レベル3の欠点は、参加する親の何人かは、このようなグループでは扱いきれない強いニーズを抱えていることだと指摘しています。

親グループに来る人が、予防的効果を期待しているなら、その人たちはもっと根深い問題にとりくむ準備もないし、気持ちもないでしょう。
なかには、ひとりの問題だけに時間を費やすことに腹を立てる人もいるかもしれません。また他のメンバーは、表面に出る感情の強さによって脅威と恐れを感じるかもしれません。
 
どちらの場合でも、レベル3のファシリテーターは、一方で参加者に感情を表現することを勇気付け、もう一方で自己開示の深さに制限を設け、その間でバランスを見いだす必要があります。

レベル4ー焦点を合わせた介入

レベル4では、ファシリテーターは、レベル2、レベル3に含まれる全てをします。

しかしそれに加えて、アセスメントとより集中的なワークをするという親とのはっきりした約束に基づいて、介入します。すでに共有された子育ての問題を変えるために、親はグループに参加しています。それは特別な状況をもつグループです。

たとえば、離婚したパートナーと子育ての問題で意見が食い違っているとか、特別なニーズを持つ子どもを育てているとか、家庭内暴力の過去があるとか、児童保護や精神保健サービスと係わっているとかなどです。

焦点は、夫婦の不和や関係するおとなの精神保健の問題にあるのではなく、子育てに関する課題の問題解決にあります。グループのメンバーは、みな状況が良くなることを期待しており、個人的な親の問題を深く考えるにはかなりの時間がかかるだろうと、最初から理解しています。
ドハーティは、親や家族教育分野のプロフェッショナルは、より強いニーズを持つ家族と働くことをますます求められるようになってきていると観察しています。

レベル3とレベル4の境界はぼやける傾向があります。

ドハーティは、親グループにおけるレベル4の仕事には短期にするべきだと強調しています。
もし、提案された介入が、家族の問題を解決する助けになっていなければ、ファシリテーターはさらなるカウンセリングのための紹介を行うべきです。

レベル4での仕事は、家族と同様、ファミリーセラピストや他のプロフェッショナルとの緊密な連携が必要です。

レベル5ーファミリーセラピー(家族療法)

レベル5は、親・家族教育と呼ばれるレベルを超えています。

セラピストと家族は、問題の核心に到達するために必要などんな問題でも探求するという契約をします。セラピストは、激しい個人的な悩み、対人間の葛藤、変化への二律背反的な思いや抵抗などを、家族とともに考えます。
セラピストに出会うとき、家族はこれが、教育的プログラムではないことを知っています。たとえ、彼らがやっていくうちに本当に物事を学ぶかもしれないとしても。
特別なスキルとトレーニングが、このレベルで働くために求められます。

mami
mami
日本でよく行われているのが、レベル2ですよね。
いわゆる講演会。レベル3が、ファミリーライフエデュケーションのメインのスタイル。多くの方が手がけておられると思いますが、実はレベル3をするには、かなりの力量が必要です。レベル4はそれ以上だし、レベル5は心理治療です。
「支援してあげたい」という感情だけで、力量がないまま高いレベルの支援を提供することは絶対に避けましょう。