家族支援、コミュニティ支援の目的はmake a difference。世の中を、人をちょっとだけいいほうに変えよう、という精神です。
ただ、この「変化」というのが曲者で、なかなか手ごわい相手です。そこで、家族支援者のためのどのテキストでも、この「変化」については、しつこいほど解説をしています。
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変化の階段(Staircase to change)の概要
変化を解説する理論はいくつもあるのですが、一番わかりやすいのが変化の階段です。
人間の内面的変化が、実際どういうふうに推移するのかを、階段に例えて詳しく分析しています。
階段は4段。順に紹介していきましょう。
1段目.知らないし出来ない
まだ全く変化が起きていない段階です。
変化する必要性は自覚しているかもしれないが、どうすればいいかわからない。
もちろん、それをすることもできない状態。
2段目.知っているけれど出来ない
変化のためにどうすればいいかはわかった。
けれどそれをうまくやることができない。
試してはあきらめ、を繰り返している状態。
3段目.考え、自覚していなければそれが出来ない
変化のための方法を知り、それができるようになった状態。
しかし、自分で自覚し、意識的にやろうと思わなければできない。
4段目.考えることも気づくこともなくそれができる
もう、起きた変化が血肉となり、意識しなくても自然と身体がそう動いてしまう状態。
変化の最終段階です。
このような段階を経て、人は変化をしていきます。
変化の階段の上り方
ただ、この変化は、スムーズに進行するわけではありません。
変化を志向して、とんとんとん!と進むわけではないのです。
いろいろな刺激をあちこちで何度も受けて、初めて次の段階に上れることがほとんど。
しかも、一回上がったのに、またしばらくして気づいたら元に戻っているということも少なくないと言います。
実は、これ、個人だけではなく、社会的変容についても応用できる考えだそうです。
つまり、人、あるいは社会が「変化する」ときは、この4段を、長い時間をかけて、行きつ戻りつしながら、あるいはある段階で立ち止まりながら、ゆっくりゆっくりと登っていくというわけです。
支援者が変化について知る意味
とにかく、人間の、社会の変化・変容は、そう簡単に起きるものではなく、たとえ変化したとしても元に戻ることがあり、大局的に行って非常にゆっくりとすすむものなのだ、と知っておきなさい、と家族支援学は説いています。
それはなぜかと言うと、それを知っておけば、支援者が、目の前の現実にうろたえなくてすむからです。
家族支援者が誠心誠意仕事をしても、相手が、あるいはコミュニティが変わる様子が見えないとき、やはりどうしても無力感や焦燥感にとらわれてしまいがちです。
でも、変化の階段をはじめとする変化理論を知っていれば、落ち着いて推移を見守ることができます。
今は変わらなくても、必ずその礎となる仕事をしたのだと信じて、現実を焦らず受け止めることができるのです。