家族支援のいろいろ

「子育てひろば」は児童虐待防止の最前線

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「子育てひろば」とは?

子育てひろばというのは、0・1・2・3歳のお子さんとその保護者が気軽に遊びにいける居場所です。
これは、家族支援でいうと、福祉的アプローチの一つ。


カナダの子育ひろば室内の様子(雲雀信子さん撮影)

おそらく、どの自治体にも、単独運営、保育所併設、学童保育や児童館併設など、カタチは違えど一つ以上のひろばが設置されていると思います。市町村によって、運営方法も、公設、委託、民営など様々です。
ボランティアで運営されているところもあるでしょう。

どこでも、スタッフが常駐して、子育ての話をしたり、親同士を繋いだり、さりげなく場を作っています。
※スタッフがいないひろばは、ひろばと言うより遊び場提供です。

リトミックなどのイベントや、専門家のお話等の講座、あるいはお母さん、お父さん同士のしゃべり場など、催し物が行われることもあります。

けれど、普段は、ノンプログラム、つまり特になにもすることが決まっていない場であることが基本です。

「子育てひろば」が、なぜ児童虐待防止の最前線なのか

児童虐待の原因

児童虐待という言葉のカバーする範囲は、イメージするよりずっと広く多様です。
そして、家族支援はあくまでオーダーメードなので、児童虐待においても、一つ一つの家庭の事情に丁寧に寄り添います。
だから、あまり総論を語りたくはありません……。
ただ、児童虐待の背景として、次の三つのリスクは、多くに共通しているものだと思います。

キャパオーバー

キャパ、つまり本人の能力に対して、オーバー、つまり引き受けられないほどの仕事を背負ってしまった状態ということです。

多くの人が気づいていないかもしれませんが、子どもを持った誰もがすぐに、「親」をできるわけではありません。
かつては、自然と兄弟や近所の子を子守してレッスンする機会がありました。
けれど、もうずいぶん前から、小さい頃から学校的な勉強だけをして、赤ちゃんを抱いたことがない、小さな子の面倒を見たことがないという人はたくさんいます。
あるいは、自身が小さな頃から親子関係でつらい思いをしており、そのせいで子どもに愛情を持てないという人もいます。
そもそも、性格的に「親」に向いていないということもあるかもしれません。

つまり、人によって子育てのキャパは違うのです。
それは本人のせいではない。
たまたま、そういう状況だっただけ。

それなのに、周りはそんなことはお構いなしに、「親」という役割を誰にも同じように期待します。
そして、親になった人も、自分のキャパオーバーを自覚せずに、頑張ってしまうのです。

頑張りきれなくなったとき、ネグレクト(放任)の恐れがあります。

孤独

子ども一人育てるには、村中の力が必要。
というのは、家族支援の世界では有名なことわざです。

そもそも、親だけでは子どもを育てるのは至難の業です。
シングル家庭だったらなおさらのこと。
実家の親だったり、ママ友だったり、公的支援だったり。
子育て上手の親は、周りに頼れる誰かがいて、
コミュニティ内の有形無形のリソース((※そこにある使えるものやヒトや場所など)を最大限活用しています。

周囲の助けが得られない人、助けを借りるのが下手な人は、やはり虐待のリスクが大きいです。

また、パートナーの助けがある人とない人では、孤独感が大きく違う。
もし、忙しくて、実際に助けてくれる時間がとれなくても、精神的な支えがあるかないかの差も大きいです。

mami
mami
「子育てはお前の仕事だろ!」と言われるのと、「大変なのに手伝えなくてごめんね」と言われるのとでは、同じ状況を抱えていてもずいぶん違うのデス……

うまくいかなさ

どんなに条件が整っていても、どうしても子育てがうまくいかないということもあります。
自分では一所懸命やっているのに、どうしていいかわからない。

また、世の中には、「よりよく育てる」ための情報が溢れていて、ほんとうは、食べさせて寝せて着せて遊ばせて、そして愛せばそれで十分なのに、早期教育、幼児教育、あるいはより良い環境の設定など、親がしなければならないことが山ほどあるような気がして、またまた頑張ってしまう。

まあ、いろいろやってもそれなりにおりあってうまくいくのがマジョリティですが、ときに、それが児童虐待につながることがある。

私はちゃんとやっているのに、うまくいかない。

そのうまくいかなさは、子どものせい。
「この子が××だから……」「なんでもっとがんばらないの?」と思い始めると、虐待の誘因になりがちです。

子育ひろばはそれらの虐待リスクに対応する機能を持つ場所です。
だから、虐待を未然に防ぐ大きな役割を持つのです。

子育ひろばの役割

もちろん、以下にあげる以外の機能もあると思いますが、虐待防止につながる、ひろばの主な機能はこちら。

レスパイトの提供

一人では生きていけないだれかの世話をする人をケアギバーと言います。
だから、小さい子どもの世話をする親もケアギバーです。

ケアギバーを24時間ずっとやり続けることはとてつもないストレスで、それは、可愛い我が子でも同じこと。

もっと言えば、それは不可能とも言えることで、ケアギバーには、必ずレスパイト=一時的休息が必要です。

働く親は、仕事と家事育児の両立で大変、ということは市民権を得たイメージですが、家で育児をする親は大変というイメージは、あまりありませんよね。

けれど、働く親は乳幼児と一定時間離れることで、毎日、ケアギバーとしてはレスパイトしているのです。
一方、家で子育てする親は、レスパイトの機会がありません。そういう意味では、実は、家で子育てする親のほうがしんどいのです。

レスパイトの機会を持たない親にレスパイトを提供するのが子育ひろばであり、一時預かりサービスです。

ひろばでスタッフが子どもの相手をしてくれたり、一時預かりで保育士が一定時間子どもを見てくれたりすることで、親は、24時間ケアギバーの重圧からやっと逃れることができるのです。

そしてレスパイトつまり一時的休息を取ることで、キャパオーバーを解消し、またケアギバーとしての毎日に戻っていくことができます。

時折
「親が責任を持って子どもを見てください」
と言う子育ひろばスタッフがいる。
とか、
「親のリフレッシュのために一時預かりを利用するなんて」
と非難する一時預かりサービスの保育士がいる。
という声を聞くことがあります。

おそらく、ケアギバーにはレスパイトが必要という家族支援の基本的な知識を持たないための誤解によるものと思います。

そのような方にも届きたいというのが、このサイト運営の理由です。がんばります!笑

コミュニケーションの場

一緒に子育てする仲間がいれば、小さな悩みを相談する相手がいれば、虐待のリスクは減ります。

子育てひろばは、孤独の解消や悩み相談の場として機能しています(しなければなりません)。

子育てひろばがそのような場として機能するために、スタッフは、

・新しくきた親子が居心地よく過ごせるようにさりげなく気を配り、
・同じ地域に住む人同士、気が合いそうな人同士、同じ月齢の子ども同士をなんとなく繋げ、
・子育ての小さな悩みを、否定せず指導せず、仲間と共有しながら、適切な情報を提供しつつ、

ただ、そこになんとなくいるだけの雰囲気を漂わせている。

という神業を、日々やってのけているわけです。

繋ぐ役割

ひろばでのコミュニケーション、悩み相談や先輩からのアドバイスでも解消しない、少し深刻なケースの相談が持ち込まれることもあります。

この背景には、パートナーのありようや本人の生育歴、あるいは経済的な問題、子どもの性格あるいは発達特性等、さまざまな理由が考えられます。

親本人には気づけない、それらの要因を見極め、必要な支援につなげるのも、子育ひろばスタッフの力量です。

そのために、ひろばは、公的、私的な地域リソース(利用可能な支援や制度、サービス等)の情報を持っています。

地域リソースの所在と連絡先を持っているだけではプロの仕事とは言えません。
それらが、どのような人によって提供されており、具体的にどんな成果が見込まれるかまで把握しておくのが理想です。

もし、多忙等でそこまで全てを把握できていない場合には、利用者に紹介するときに、
「ここにどんな人がどんなサービスをしているかまではこちらではわかっていないので、実際に行ってみて役に立つかどうか、自分に合うかどうかを見極めて活用してください。」
と合わせて伝えることが不可欠です。

残念ながら、相性が合わないときは、サービスによって親が傷つく例もありますから……。

見逃される「子育てひろば」スタッフの大きな役割

子育てひろばのスタッフの方は、家族支援のプロとして児童虐待防止を担っているという誇りをもって仕事をしてほしい。
私は常々そう痛感しています。

予防が成功すると、なにも起きません。
なにも起きないから注目もされないし、もしかしたらその成功に気づかれもしない。

なにか起きた後、それが起きた原因を糾弾することはあっても、なにも起きない時、起こさなかったことを賞賛されることはありません。

また、子育て危機に陥っている親を救う仕事はわかりやすいけれど、小さなつまづきをフォローして困っていない状態をキープする仕事はわかりにくいです。

だから、子育てひろばのスタッフは、ただそこにいて、親と話したり子どもと遊んだりしているだけと思われがちではないか、と私は懸念しています。

mami
mami
それは、利用者の親だけではなく、新しくスタッフになる方も、意外とそう思ってるんじゃないかな

けれど、子育ひろばでどんな声かけをされ、どんな人間関係を築けたか、どんなアドバイスを受けたか、そんなことで救われた親は、当人が気づいてない場合も含めると、虐待してしまった親の何十、何百倍もいるはずです。

そこには、家族支援のセオリーを根底に持って、ふさわしい支援を提供するプロの存在が不可欠です。

family supports worker
family supports worker
素人(=実力のない人)がスタッフをしていたら、その効果は半減しちゃいますけどね。
mami
mami
そーですね……だからここでプロの勉強ができるようにしたいと……
family supports worker
family supports worker
その割にコンテンツ足りなすぎじゃないですか。
mami
mami
すみません……頑張ります……
とにかく!

本来、子育てひろばのスタッフは、家族支援のプロとして、日々、とても難しい、そしてとても大切な仕事をしている人達なのです。

あなたが子育てひろばのスタッフなら、こちらの記事→パワーとエンパワーをわかるのは家族支援の基本中の基本だよ!対等で親しい関係から始める、ぜったいにも、ぜひご一読ください!