保育・子育て・子育て支援・家族支援
今回は、この4つのちがいを順番にざっくり解説します。
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保育と子育てのちがい
保育と子育ては、しばしば混同あるいは同一視されており、法律で保護者の指導が保育士業務に組み込まれたこともあって、日本の子育て支援は主に保育士が担う傾向にあります。
けれど、乳幼児の面倒を見る、躾をするという面では、同じように見える保育と子育てですが、実はぜんぜんちがうものなんです。
保育(個別保育を除く)
集団/グループで行う
分業制(掃除、洗濯、食事作り、施設管理、対外交渉、財政など)
原則として病児保育、重度障害児保育は行わない
就業時間内労働
子どもに対する最終責任を持たない
子育て
個人で行う
子どもの養育だけでなく家事や雑事、家計等も全て親(またはそれに代わる養育者)がマネジメントする
病気、障害もケアする
在宅児の場合24時間
子どもに対する最終責任を持つ
今まで、多くの保育士さんが、保育士であるというだけで子育て支援を任され、あるいは託され、取り組む必要に迫られてきました。
そしてカンのよい人ならすぐに「なにかちがう」と気づき、そしてその結果、自助努力によって子育てや子育て支援がどういうものかを少しずつ掴みながら、支援的活動をしてきたことと思います(少なくとも私の知っている保育士さん達はそんな感じです)。
でも、そもそも保育と子育ては、別のものなんです。
子育てと子育て支援のちがい
子育て支援は、子育ての「支援」。
じゃあ、保育士ではなくて、子育てを実際にしてきた、親などの子育て経験者なら子育て支援をできるのでしょうか。
もちろん、そういうわけではありません。
なぜなら、子育てというのは、親(養育者)の、自分の子どもを育てるという個人的な経験でしかないからです。
子育て経験とは、言いかえれば、自分の子どもを育てた経験でしかない。
たとえば、健常児の親は障害の子の子育てを知らないし、逆に、障害の子の親は、健常児の子育てを知らない。
けれど、「支援」をするとなれば、子どもの障害の有無にとどまらない、ひとり親家庭や養育家庭、あるいは、両親や子どもがLGBTのケースなど、多様な家族のありようを分かっている必要があります。また、家族心理学、家族社会学等の知識も一通り必要だし、なにより「支援」の理論とスキルがなくてはなりません。
つまり子育て支援は、保育ではなく、様々なかたちの子育てについて知識または経験がある人が、なおかつ「支援」とはなにかについても了解・習得して初めて可能になるのです。
子育て支援は親支援
子育て支援の対象者は、実は子どもではなくて親(養育者)です。
だから、子育て支援者は、子どものプロフェッショナルであるよりまず、親の現状、心理、夫婦関係や現代社会が親に与える影響についての認識、成人とのコミュニケーション力や成人教育学の知識等のほうが大切。
保育と子育ては、別のもの。子育て支援は、子育ての「支援」。
ということを抑えて眺めなおすと、保育士さんに子育て支援を任せる、というのは、素人にいきなりプロの仕事をしろと言っているようなものだということがわかりますね。
きっと、保育士の皆さんご苦労されたのではないかなあ。
保育士の専門性は乳幼児の保育にある
保育とは「子どもの善い育ちへの直接的働きかけ」。だから、保育士に求められるのは、子どもの発達についての基礎知識や子どもへの有効な働きかけのスキル。保育士の主たる専門性は保育にあり、子育てあるいは子育て支援にあるわけではないのです。
言いたいのは、毎度おなじみ、保育士出身だろうと、親出身だろうと、とにかく子育て支援者には、子育て支援の専門性が必要ですってことなのです!
子育て支援と家族支援のちがい
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子育て支援という用語は日本のもので、英語では「家族支援=Family Supports」と総称します。
そして 家族支援は、親への支援を、子育ての手助けやアドバイス、保育の提供というせまい範囲に限定しません。
そもそも、家族支援の”家族”とは、子どものいる家族限定ではありませんし、子どものいる家族の支援に限ったとしても日本より遥かに多岐にわたります。
だから、子育てのアドバイスどころか、就労支援や家さがしから、洋服リサイクル、食事支援、子どもや親の学習支援、心理的危機の予防、婚前教育、性教育に至るまで、とにかく家族のウエルビーイングの実現のための包括的サービスが家族支援。
地域の情報提供、ファミリーセラピー、カウンセリング、福祉などの必要な支援に繋ぐことも支援の範疇です。
そして、家族支援は、子ども支援=家族支援=地域づくりという発想、つまり、子ども-家族-地域は、切っても切れない関係にあり子どもの幸福を目指すなら、結局は家族(またはそれに代わるシステム)が、ひいては地域全体が幸福なコミュニティとなる必要がある、という考え方をベースに持ちます。
多様な支援の提供と地域づくり、この双方の理由から、家族支援の実践には、子育てにかかわる人だけでない、広範囲なネットワークが不可欠です。