「自己覚知」というのは、社会福祉の用語で、自己=自分のことを、覚知=自覚している、ということ。英語でいうと、セルフアウエアネス。セルフ=自分、アウエアネス=気づいていること、です。
だれかの支援をする前に、これは必ずしなくちゃいけないことなんですね。
考え方のクセとか、コミュニケーションのクセとかを、自分でわかっていることがだいじ。
自分ってどんなヤツなんだ?
プロの条件の基本の基本は、自分を知る努力をしていることです。
自分がどんな性格なのか。
なにを気持ち良く感じ、なにを嫌だと思うのか。
どんな考え方のクセがあるのか。
自分の育ってきた経験は、今の自分にどんな影響があるのか。
偏見は持っているか。
知らないことはなにか。知っていることはなにか。
なにが得意でなにが苦手か。
なにに興味があって、なにに関心がないのか。
そして、
自分は社会的にどんなパワーを持っているのか。
ちょっとムズカしくなってきましたね。
すみません…。
でも、自分が社会的にどんな特権をもっていたのか、逆に、どんなハンデがあるのか。
たとえば経済的な状況ひとつとっても、一人ひとり、さまざまな状況がある。
そういう、自分のもっている見えない特権やハンデを見極めておくのは、すごくだいじなことなんです。
まあ、とにかく、
家族支援は、
「自分ってどんなヤツなんだ?」
って向き合うところから始めます。
なぜ、自分を知るの?
家族に向かうのではなく、まず自分を見つめる。
それはなぜか。
家族支援にふさわしい人物かどうか考えるため、なわけがない。
そういう考え方を、家族支援はしない。
ただ、向き不向きというか得意不得意というか、
できれば、どんな性格でどんな人と相性が良くて、
これまで生きてきた道にどんなことがあって、
とかまで、
そういうことを知ることは、「効果的」な家族支援にとってとても大切なこと。
自分がどんな支援が得意でどんな支援ができるのか。
逆に、どんな支援が苦手でどんな支援ができないのか。
それをしっかり把握することで一番「効果的」な支援ができるし、
できないことをやってしまって失敗するリスクもかなり避けられる。
自分を活かす道もわかるし、克服すべき課題も、専門家やほかの支援者に譲るべきポイントも見えてくる。
だから、いちばんさいしょに自分を知る努力からはじめるのです。
リスクを最小限にするために
悲しい実例
自閉症スペクトラム(と診断されていない)の赤ちゃんを抱えた母親が、「目が合わない」と育児相談を訪れたが、その相談者は発達障害(神経発達症群)の知識がなく、「もっと愛情をかけて抱いてあげなさい」とアドバイスし、そのアドバイスに従っても、当然母子関係は改善せず、母親は途方に暮れたという。
相談者自身が、的確なアドバイスができなかったとしても、せめて自分が発達障害(神経発達症群)のことを知らない、と知っていたらよかったのに……。
家族支援はむずかしい。
この相談者だって、誠心誠意やっていたことと思います。
それでも、発達障害(神経発達症群)についての勉強不足に加え、自己覚知(今話題にしている自分を知ること)不足があると、悲しい結果を招いてしまうのです。
……自分を吟味し続けるのはシンドい作業ですけどね。
自分で自分のことなんてよくわかんないし。
知識や経験が増えるたび、
つい、
自分で何でもできるような気持ちになってしまうし、
目の前に応援したい人がいると、
思わず、
自分の力でなんとかしたくなってしまうし、
でも、支援の仕事は、やっぱり責任ある仕事だから、
ゼロにすることはできなくても、リスクは必ず最小限にとどめたい。
人を幸せにしようとするアクションで、だれかに悲しい思いはさせたくない。
だから、家族支援のプロであるために、
パワーとエンパワーをわかるのは家族支援の基本中の基本だよ!
家族と関わるときの5つのレベル~あなたはどのレベルで仕事をしますか~
子育て支援業界は、家族支援のプロじゃない人材を求めてる!